上級編 1. イールドカーブ
1.1 Interpolation
1.1.7 Minimalist Quadratic Interpolator
< 関数形 >
Hagan-Westは、さらに別のInterpolationの方法を提案しています。
この方法も、Monotone Convex Spline法と同じく、瞬間フォワード金利の補間関数を導出するものです。すなわち、Pillar間における瞬間フォワード金利を2次のSpline関数で下記のように表現します。
f(t)=ai+bi(t−ti−1)+ci(t−ti−1)2, ti−1<t<ti,この補間関数が満たす条件として、まず区間における瞬間フォワード金利の平均(積分)は区間フォワード金利と一致する必要があります。
fdi=1ti−ti−1∫titi−1f(s)ds=ai+12bihi+13cih2i, i=1,2,…,n,また、各Pillarにおいて瞬間フォワード金利が連続であるとすると、
ai+1=ai+bihi+cih2i, i=1,2,…,n−1これで、3n 個の未知数に対して、2n-1 個の方程式が揃いました。
< Penalty 関数 >
あとn−1個、式が揃えば連立方程式が出来上がりますが、その方法を取らず、エラー関数を最小にする形で未知数を求めていきます。ここで使う制約条件としては、例えば、上記式の1階微分や2階微分を連続にする、といった条件が考えられます。
しかしここでは、Pillarの前後で発生する1階微分の値がジャンプする度合い、及び期間加重した2階微分の値をPenalty 関数として導入します。
まず、瞬間フォワード金利の補間関数の1階微分と2階微分は、以下のようになります。
f′(t)=bi+2ci(t−ti−1),f″(t)=2ci,また、各Pillar ti で発生する1階微分のジャンプと期間加重した2階微分を次の様に定義します。
J1,i=bi+1−bi−2cihi, i=1,2,…,n−1J2,i=2cihi, i=1,2,…,nそして、Penalty 関数を、ウェイト付けされたそれぞれのジャンプ値の2乗和の合計と定義します。
Pw:=wn−1∑i=1J21,i+(1−w)n∑i=1J22,i,1.1.65式と1.1.66式の制約条件(2次のSpline関数の区間での積分が、区間フォワード金利と一致する事、および、2次Spline関数は各Pillarで連続)の下で、Penalty 関数を最小にするようなInterpolatorの係数を求めたいと思いますが、これはラグランジェ乗数法を使って解けそうです。3n 個の未知数に対して、2n-1 個の制約条件からくる方程式があるので、自由度はn+1になります。
3n 個の未知数のベクトルを
x={a1,b1,c1,a2,b2,c2,…,an,bn,cn}={x3i−2,x3i−1,x3i,…,x3n−2,x3n−1,x3n}, i=1,2,…,nとおき、上記制約条件の式を、下記のように書き換えます。
0=x3i−2+12x3i−1h1+13x3ih2i−fdi:=gi(x), i=1,2,…,n,0=x3i−2+x3i−1h1+x3ih2i−x3i+1:=gn+i(x), i=1,2,…,n−1また、最小値を求めたいPenalty 関数は、以下のように書き換えられます。
Pw=wn−1∑i=1(x3i−2−x3i−1−2x3ihi)2+4(1−w)n∑i=1x23ih2iラグランジェ乗数を λk, k=1,2,…,2n−1 と置くと、以下のような最小値問題が出来上がります。
∇Pw=2n−1∑k=1λk∇gk,or ∂Pw∂xi=2n−1∑k=1λk∂gk∂xi, i=1,2,…,3nこれで5n-1 個の未知数に対して、5n-1 個の方程式が用意され、解が求まります。
< ウェイト w について >
その前に、Penalty 関数の中で使われているウェイト w を決めなければいけません。これもまた、出来上がったカーブの形状を見ながら主観的に決めるパラメータになります。Hagan-Westは、論文の中で、w はベンチマーク商品の数に依存すると述べています。ベンチマーク商品の数が少なく、Pillar間の間隔が長い場合、w<0.65 にすると、出来上がったカーブは、Piecewise linear forwardに近くなります。Piecewise linear forwardは、区間毎にジグザグの波を形成し、区間が長いとマイナス金利が発生する可能性が高くなり、実務では使えません。一方で、w↑1 に近づけると、1階微分のジャンプに対し高いペナルティーを与えるので、Quadratic Spline法に収束していきます。Quadratic Spline法の大きな問題点のひとつは、カーブの両端をマッチさせた後、まだ自由度が1つ残り、主観的な調整が必要になる事です。しかし、w=1 にしない限り、Penalty 関数を使った上記方法では自由度は発生しないので、特に問題にはなりません。
一方で、ベンチマーク商品の数が多く、Pillar間の間隔が密な場合、w を1に近づけると、カーブにジグザグの波が発生し、マイナス金利の可能性も高くなります。経験値として、w>0.9 でその可能性が高くなります。その結果、Hagan-Westは、w=0.8 程度が、最適ではないかと述べています。
Hagan-Westによれば、この方法は実務では人気のある方法のようです。